離婚後、独り身だった僕のおふくろと
再婚した継父は、
あの天下の左日新聞のお偉いさんだ。
今日も僕は継父の言動に首をかしげる…
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再婚した継父は、
あの天下の左日新聞のお偉いさんだ。
今日も僕は継父の言動に首をかしげる…
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【第19話】 今日はとんでもない日曜日だった。また隣の神田家がやってくれた。 午前中、神田家の亭主が、例によって大音量のロックを流しながら、高圧洗浄機で自宅の壁の汚れを、思いっきり洗い落としていた。またうるさいことをやっていると呆れながら、オレは二階の部屋からその様子を眺めていた。 ふと、神田が使っている高圧洗浄機が気になった。黄色く輝く新品らしい洗浄機。継父が半月前に購入したものと同じだ。いくら困った変人隣人とはいえ、まさかわが家のモノを無断で使うなどということはないだろう。近くのホームセンターで買ったから、神田の亭主が同じものを買ったとしても不思議ではない。 念のため、外の車庫に行ってわが家の洗浄機を確認してみた。なんと!ない…。継父は車で出たらしく、シャッターは上がっていた。まさかと思い、低い生垣越しに、神田に挨拶がてら大声をかけてみた。「精が出ますね。うちと同じヤツ、買ったんですか」。すると、一瞬ギクッとした表情でこちらを振り向いた神田は、「おお、買ったヤツだよ!」とひと言発し、そのまま作業を続けた。なんか怪しい。 少しすると継父が帰って来た。車庫入れして車からおりた継父に聞いた。「この前買った高圧洗浄機、どこにある?」。「ここに置い…、あれっ、ないな」と言うと同時に、継父は隣の神田の使っている洗浄機に視線を送った。「なんでヤツが使っているんだ!」と小さく叫ぶと、生垣まで足早に向かった。 「おい、それウチのだろう」と継父。「あぁ?オレがきのう買ってきたもんだ」。「うそつけ!だったら製造番号を見せろ。保証書の番号と照らし合わせようじゃないか!」「いまオレは忙しいんだ。そんなことしてられるか!」 神田はそう言うと、急いで洗浄機のコンセントを抜き、ホースを巻いて玄関にしまい込んでしまった。これは間違いない。神田はわが家のモノを盗んだのだ。 継父はすぐに生垣を回り込んで、神田の玄関に到達。オレも追った。ノブを回したが鍵をかけられたらしい。ドア越しに応酬する。「おい、盗人!警察呼ぶぞ」「なにが警察だ。これはオレのだ。おまえが所有権を主張するなら、民事の問題だ!」と訳のわからないことを叫ぶ神田のそばで、なにやらガリガリ音がする。製造番号を削っているようだ! 継父は意を決したように急いで家に戻った。そして「何が民事問題だ。これは明らかな犯罪なんだ。所有権の問題などはなっからない!」と怒りをぶちまけると、すっくと立ち上がって電話へ向かう…。 …そうなのだ。双方で所有権を争う「問題」などではない。 「うちのものを隣が盗んだ。その盗人が猛々しく所有権“問題”にしている」に過ぎない。継父は正しい。正しいのだが…。 尖閣諸島とそっくりではないか。日本のものを中国は領有権“問題”にしてしまっている。日本にしてみれば、はなから“問題”などない。それは自分のものだからだ。泥棒と被害者との間に所有権の「問題」など存在しない。しかし天下の左日新聞は、「相手が問題と言っているのだから、問題として認めろ」と中国の片棒を担ぐ。 赤宮のおやじよ、今日のような真っ当な感覚で中国に挑んでくれよ。頼むぞよ。 |
【第18話】 今日、継父と母がおじの勲さんとともに沖縄から帰って来た。「いや~、やっぱ沖縄はいいな。3年ぶりだったけど、まったく変わってなかったよ」と継父は満足げ。今日、継父が旅行から帰ってくるということで、華之夫婦が娘の李子を連れてやってきた。久しぶりに義理の妹のメリーも顔を出し、一族勢揃いとなった。 ちんすこうやら泡盛やらの沖縄定番のおみやげを開いて、宴に入った。デジカメ内の記念写真をテレビ画面で上映し、いつも苦み走った表情で写っている勲さんをちゃかしたりして盛り上がった。 「このおじさん、今はしょぼくれてるけど、昔は悪いヤツらと戦った人なんだぞ。カッコよかったんだぞ」と継父は、孫の李子に言い聞かせた。たぶん、全共闘で機動隊に抵抗した時のことを言っているんだろう。 まだ8歳の李子は「ふ~ん」と興味なさそうに「べにいもたると」を食べている。勲さんは照れながら「お前のじいじだって、日本で一番頭のいい東大ってところを卒業したし、今では日本で一番すごい新聞社の偉い人なんだぞ。すごいよな」と、兄弟で恥ずかしげもなく持ち上げ合戦を始めた。「ホント、二人ともすげえよな」「尊敬しちゃう」と華之夫婦。「いや~、それでな」…といつもの武勇伝に花が咲いた。でも、勲さんの逮捕・有罪判決には触れなかった。 …おい、ちょっと待ってくれ。子供には「先祖の悪い事も正直に教える」のが左日新聞の主張ではないのか。 なぜ継父は「このおじさんは、警察にレンガを投げつけて大ケガをさせたから、手錠をかけられて逮捕された悪い人だったんだぞ」と教えないのか。なぜ「カッコよかったこと」しか言わないのか。 都合が良すぎる。自分たちに対してはその主張を平気で引っ込めるのだ。卑怯なヤツら。 できないだろう。自分の孫に一家の恥をさらせないだろうに。歴史教育とはそういうものだ。これから成長し未来の日本を背負っていく子供たちに、自国のダークサイドだけを教えてどうする。 もっとも、左日新聞の場合、「正直に教える」のではなく、捏造した「ウソ」で日本の悪を言い立てているのだが…。 |
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