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【ぼくの継父(おやじ)

A Stepfather

離婚後、独り身だった僕のおふくろと
再婚した継父は、
あの天下の左日新聞のお偉いさんだ。
今日も僕は継父の言動に首をかしげる…



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一番下から第1話が始まります。

 【Report S002】 Confidential Lebel -5

《2014年3月》

●「セロリ」から報告が入った。彼らC.O.F3(China-Okinawa-Friendship3)の会合のテーマは「沖縄独立促進第二段階」であった。技術班によるレーザー反射式盗聴器を使った会合の内容のうち、赤宮の関わるメディア戦略部分だけを以下に記す。

①沖縄県民の意識の強調

左日新聞、地元新聞は引き続き沖縄県民のほとんどが米軍基地に反対しているということを大々的に宣伝する。ただし県民の世論調査は行わない。なぜならCOF3にとって不都合な結果(基地賛成の意見が反対に迫る、あるいは反対を上回る)が出る可能性があるため。 
また、沖縄県民は本土の人間から差別を受け、本土の人間は沖縄県民に憎悪感を抱くような表現を用いて、お互いの心理的な離反を図る。

②集団的自衛権の反対キャンペーン

沖縄独立の最大の障害となる日米同盟を崩すため。左日新聞にはCOF3の息のかかった識者を登場させる。

③特定秘密保護法の危険性強調

この法案潰しには失敗したが、秘密保護法がCOF3のスパイ工作活動に制限を与えることは確実なため、執拗に反対キャンペーンを行っていく。

④尖閣諸島の領有権の問題化

いま日本政府が進めている「尖閣は日本の領土」という事柄を教科書に掲載させることは絶対に阻止。

 いずれも、今までの活動方針の継続を確認したものだが、今回、新しく確認できた情報は、日本の主要テレビ局や全国紙には、COF3の先発グループCOF1、COF2のメンバーが散らばっているのだが、彼らを統括しているのが左日新聞の赤宮だったということ。
 以前からその情報は入っていたのだが、今回の盗聴により確実となった。もちろん、各社の記事を赤宮がチェックするというわけではない。COF司令部からの方針を各社のメンバーに伝達するという任務である。
 たとえば、あまりにも中国寄りの報道すると国民から怪しまれるため、中国批判の記事も適度に載せるという方針。ただし、チベットやウイグル問題のような少数民族弾圧の記事を掲載してもよいが、
 
◇「中国政府が反対派を拘束・監禁し、言論弾圧をしている」というレベルでとどめる。
◇決して他紙のように「残虐な拷問、人民解放軍による一般人の虐殺・民族浄化」等を取材・報道してはならない。
◇ニュースソースはCOFが出す…といった具合である。

 わが公安が赤宮を徹底マークする理由はここにある。今後も引き続き報告を送る。

  【第17話】

 今日、MIDIケーブルを繋ぐために居間のテレビの裏側に入ったら、マジックで書かれた4桁の数字を見つけた。
なぜかとても気になったから、その数字をメモ用紙に書きとめてしばらく眺めていると、ふと継父の部屋のカギを連想した。継父は母と再婚し、わが家にやってきてからは、亡き父の部屋を一人で使っている。新聞社の機密にかかわる資料があるとかといって、継父はその部屋にたいそうなボタン式のカギをつけてしまった。それ以来、オレはその部屋には入ったことがない。
 むくむくと好奇心が湧き上がり、夫婦で沖縄旅行をしている今、部屋に入ってやろうと思った。案の定、数字はカギのパスワードだった。誰もいないのだが、なぜか恐る恐るドアを開け、薄暗い部屋の中に入った。カーテンを開けると、日差しが入り込み、部屋全体を照らし出した。
 もう亡き父の匂いはどこにも残っていなかった。あったのは大きなテーブルに置かれたパソコンとラジオとヘッドホン。そして無造作にケースに入れられている書類の山。数枚を見てみると、ハングルや漢字(たぶん中国語)がプリントされている。それにA4判にびっしりと数字とアルファベットが並んでいる紙もある。
たぶん、外国からの報道資料かなにかだろう。ひとつ気になったのは、部屋の隅のダンボール箱の中に、今はめったに見ないカメラのフィルムケースのようなものが何十個も入っていたことだ。

 特におもしろそうなものは見つからず、オレは元通りにカーテンを閉めそのまま部屋を出ようとしたら、キラッと光るものが見えた。ドアの上に何かある。小さな額が打ち付けてあったのだが、光ったのはその中のものだ。カーテンを再び開け、椅子を使ってそれを近くで見ると、ダイヤモンドのようなものだった。赤い布地に大きなダイヤが埋め込んである。これが本物なら一体いくらするのだろう。

 そう考えていると、不可解に思うことがある。継父には子供が二人いて、それぞれに高級マンションを買い与えている。那須に大きな別荘も持っている。新聞社の幹部というのは、そんなに高給なのだろうか。高給には違いないだろうが、こんなに不動産を持てるほどなのか。まだ定年でもなく、退職金を使ったものでもない。株で儲けたのか。それとも危ない裏稼業で? うーん、不可解だ…。

 【Report S001】 Confidential Lebel -5

《2014年2月》

●ここからは、私、「パス」が報告を担当する。(伏せ字はトップシークレット事項)
昨日、沖縄に入った赤宮ら3名は、午前中、首里城を観光。午後からは妻・頼子だけが観光バスで半日コースを堪能。赤宮と兄の勲は、那覇市○○町のカフェAに入る。この店は、地下で中華料理店B、居酒屋Cとつながっており、その中心には広大な歓待スペースが存在することが、S班からの情報で判明している。これはアメリカ軍統治時代に造られた地下風俗店をそのまま流用している施設である。ただし地上の店は経営者がすべて替わっており、一般人はその存在を知る由もない。

午後2時までに、その中華料理店Bに中国共産党の鄭学志ら5名が、居酒屋Cには元外務官僚Mとマスコミで活躍するジャーナリストL、地元紙・首里新報の論説委員N、そして野党政治家Oが入店した。それと前後し、反原発運動の影の主導者で過激派セクト・武革連のナンバー3であるP、アジア慰安婦問題研究所・所長のQ女史がカフェAから出てきた。

このメンバーが揃うのは、今年に入って2回目、この半年で6回目である。赤宮はすべて出席している。今回はもちろん名護市長選後の運動方針を話し合うはずである。また「沖縄独立解放連絡会」の動きも連動しているのは間違いない。その内容は、当方の要員「セロリ」から報告されることになっている。しかし、先方もその対処は講じているはずであり、あくまでも詳細情報は技術班の担当となる。その報告を待ちたい。

 【Report K010】 Confidential Lebel -2

《1978年7月》

●徐は『侵華日軍暴虐調書』の綴りを開くと、赤宮の前に置いた。それは日本語で記されている資料で、赤宮もすぐに読むことができた。「三光作戦」「万人坑」「731部隊」「重慶大空襲」「平頂山事件」…あらゆる旧日本軍の蛮行が目次にある。赤宮はそれらの項目を凝視した。
数分後、徐は口を開いた。「赤宮氏、私は日中友好を最優先に考えている。その前提として、日中はお互いがお互いを理解し合わなければならない。過去の悲しい出来事も隠し立てせず、認め合うことで本物の友だちになれる。赤宮氏、協力してくれますよね」。徐は赤宮の目をじっと見つめた。
もちろん赤宮は抗うことはできない。それどころか、数ヶ月前、ジュエランに案内された「歴史所」での衝撃を思い出し、再び使命感が呼び戻された。「徐先生、是非、協力させてください。私にはこのことを日本人に知らせなければならない使命がある」と強い口調で訴えた。「ありがとう、赤宮同志!」。徐は大きく何度もうなずいた。

        ◇ ◇ ◇

※緊急報告 : 赤宮が沖縄に入ったという情報が入った。妻・頼子と赤宮の兄・勲(埼玉県W郡D村在住・過激派セクト・武革連メンバー)の3人で昨日、出発したとのこと。この半年で3回目の訪沖となる。おそらく再び現地で鄭学志一派と合流するものとみられる。
よって中国留学レポートは一時中断し、赤宮の沖縄活動を現在進行の案件として第一課の方から随時、報告することになる。(「ゼロ」より)

  【第16話】

明日は継父の孫、李子の8回目の誕生日。日中友好民間協会に勤務している息子・華之が久しぶりに孫を連れてやってくるらしい。継父は夕方帰宅してから、倉庫にしまっておいたクリスマスの電飾を出してきて、玄関と居間に飾り始めた。ホームセンターで3年前に買ってきたもので、まだLED製ではなく、電球タイプのやつである。
夕飯もそこそこに必死になって作業をし、10時ころになってやっと完成。孫を喜ばせるためとはいえ、ご苦労なことです。さっそくテストのためスイッチオン、電飾は見事パチパチと点滅し、玄関にキリンやゾウのイルミネーションが浮かび上がった。居間にも何かわからないが、動物らしき形が七色で登場。クリスマス同様、目がくらくらする演出だ。プレゼントには、電気仕掛けのキッチンのおもちゃらしい。

…いつも思うのだが、継父は電気を使いすぎる。趣味のクラッシックはオーディオシステムで大音量。この前は母の誕生日にロボット掃除機をプレゼント。テレビは深夜までチェック。寒がりだから暖房はガンガン…。
左日新聞は“原発反対”を毎日のように絶叫し、社説でも“節電、節電”を国民に呼びかけているのではないのか?
しかしその割には、大阪本店としてバカでかい高層ビルはおっ建てるし、新聞は他紙より抜けて分厚い枚数。特に土曜には金儲けのための広告専用紙を付ける。ちょっとした地方紙なみの厚さだ。系列のテレビ局は深夜まで放送を垂れ流し、国民に電気使用を促進する…。資源とエネルギーの無駄遣いが過ぎる。

このように左日新聞には自ら節電しようとする態度がみじんにも感じられない。全国の新聞社の中で1,2を争う電力使用料であることは間違いないだろう。そんな新聞社が“脱原発”とは笑わせる。
お得意の自分に甘い二枚舌!あれだけ反原発を主張し、国民に節電を訴えている左日の社員よ、夏は汗をしたたらせ、冬は寒さに震えながら仕事をしているんだろうな。まず「隗より始めよ」。

※追記:来週から予定通り夫婦で沖縄に行くらしい。せいぜい楽しんできてもらいたいものだ。

 【Report K009】 Confidential Lebel -2

《1978年7月》

●その日の夕方、赤宮は徐に連れられて張保・共産党北京研修部長の執務室に赴いた。
高級ソファに座って向かい合った張は、こう切り出した。「赤宮氏、中国では強姦罪はとても重い罪なのですよ」
すでに緊張していた赤宮は、この言葉で目の前が真っ暗になった。対照的に張は低く落ち着いた口調で、さらに追い討ちをかける。「場合によっては死刑、それも公開処刑という最悪の事態も考えられる。困ったものだ‥」
赤宮はなにか言葉を発しようとしたが、唇が強張って動かせない。足も震えてきた。その後、張は目を閉じ考え事をするように黙り込んだ。

赤宮にとっては地獄のような沈黙である。5分ほどたって、徐がそっと赤宮の背中をたたいた。そして張に向かって口を開いた。「張部長、研修生の不始末ということで、部長ご自身の責任問題にも発展しかねない問題です。そのご心痛はお察ししますが、ここは私に事態の収拾をお任せ願えませんか」
すると張は目を開け、身を乗り出して徐に言った。「何かいい方法でもあるのか。重大犯罪なのだぞ」。
「はい、幸いにも被害者の女性はまだこのことを上司にしか話しておりませんし、他言も禁じました。だからこれ以上、話が漏れる心配はございません」
この徐の言葉を聞きながら赤宮は手を合わせて必死で祈りだした。徐は続ける。「日中友好を本格的に迎えるこの時期、日本からの研究生をいくら重罪とはいえ、お互いの国民感情を考えますと。死刑に処するなどということはできません。かといって徳を大切にするわが中国が、その罪を見てみぬふりをするなどということは許されません。そこで赤宮氏とも、さきほど話し合ったのですが、彼には日中友好のためにその人生を捧げてほしいと、それによって罪を償ってほしいと提案しました。彼は快く了解してくれました」
張は腕を組んで再び考え出した。「張部長、お願いです。赤宮氏はこちらが気の毒になるほど反省しております。ここは私の提案を受け入れてください」
徐の必死の懇願に張は決心した。「わかった。徐君にすべてまかせる」と言って立ち上がると、赤宮を一瞥して部屋から出て行ってしまった。一瞬、張保がニヤリとした表情を見せたことを赤宮はもちろん知らない。

極端な緊張から解かれた赤宮は、堰を切ったように突然落涙し、徐の手をとって言った。「ありがとう、徐先生。あなたは命の恩人です」。
徐はやさしい笑顔で何回もうなずく。しかし突如その表情を引き締め言った。「それでは早速お願いしたいことがある」とカバンから分厚い資料を取り出した。その表紙には『侵華日軍暴虐調書』と記されてあった。

  【第15話】

「おい、頼子。2月になったら沖縄行こうよ。少し休暇が取れたからさ」。
今日、継父は珍しく母を旅行に誘った。現役記者時代とは違って今は割合、時間が定まっている仕事内容にもかかわらず、休日の半分は出社するか、あとは「日中友好」のための事業で忙しいらしい。だから継父は旅行などとてもできない状態だった。「ありがとう、うれしいわ」と母は年甲斐もなくうれしさで飛び上がった。
「沖縄はいいところだぞ。今の季節でもぽかぽかだし、食い物は美味いし、海もきれいだし。まるで天国!」 かつては取材でよく沖縄へは行っていた継父だけに、得意げにその素晴らしさを強調していた。
「そんなにいいところなら、将来住みましょうか」。母が乗ってくる。「そうだな。真面目に考えてみるか。それなら今回はそのための下調べだな」と継父はまんざらでもない様子。

…そこでオレはちょっと考えた。左日新聞を読んでいると、沖縄というのは在日米軍基地の75%が集中しているから(これは嘘→「沖縄米軍基地反対闘争」を参照)、空には戦闘機やらヘリやらオスプレイやらが飛び交い、うるさくて仕方がない。街に出てみると、怖い米軍兵士が闊歩していて、夜はうっかり一人歩きもできない。善良な“市民”が年中、基地反対運動をしていて、賛成派とぶつかり合っている。親戚縁者でもそのことで仲違いしてしまうことも多い。県民は本土の人間に対して「差別されている」という感情を抱いていて、最近は「沖縄独立論」も少なからず出てきている。
そんなことばっかり書いてあるから、継父のいう「天国」とはとても思えない。人間関係がぎすぎすしていて、定住など考えられる場所ではない。

ところが、総務省が公表した2013年の人口移動報告によると、沖縄県は首都圏、愛知県、大阪府、福岡県などの大都市圏に次いで、人口の転入がプラスになっているところだ。ということは、やはり実際には「天国」なのである。少なくとも、人が進んで住みたいと感じられる場所なのだし、現に数字が表している。

問題になっているのは、普天間基地周辺だけのことなのだ。例えば、「米軍三沢基地があるから青森県民は苦しめられている」とは誰も言わない。福島原発がメルトダウンを起こしたから、「福島県全域が放射能汚染されている。会津の農作物は食うな」と煽るのと一緒。左翼メディアは自分の主張に合わせて、いくらでもその影響地域を伸縮できる。

沖縄には基地賛成派も多く、反対派は本土の左翼に煽動された者が多いという。
沖縄全体を「米軍基地に苦しめられている」という煽り記事で、沖縄を差別しているのは左日新聞自身ではないのか。その目的は、沖縄と本土との断絶を謀り、中国サマの“沖縄奪還”に協力するためなのではないのか。継父は真実の沖縄をじっくりと見てくるがいい。その目が歪んでいないのなら。

 【Report K008】 Confidential Lebel - 1

《1978年7月》

●激しい交わりが終わった。彼女は赤宮の横で放心状態のように天井を眺めている。満足感と罪悪感の入り混じる中、「ウェ スォ モォ (どうして)?」と赤宮は彼女にこのいきがかりを問うたが、彼女はひと言も発しない。この部屋に入ってから何もしゃべっていないのだ。
そのうち、彼女はしくしくと嗚咽をもらした。そしてすっくとベッドから出て服を着ると、「×××!」と意味不明な言葉を赤宮に投げかけて部屋を出ていってしまった。訳のわからないこの状態に、赤宮は茫然となった。カネを請求されなかったということは売春婦ではあるまい。中国側の特別サービスにしては彼女の様子が異常。あれこれ考えるうちに急激に眠気に襲われた赤宮は、そのまま寝入ってしまった。

翌日、中国の少数民族地域に対する政策の講義を受けた。チベット、ウイグルが中国の領土としていかに正当性があるか、そしてこれからの民族同化、近代化建設についての講義を長時間受けた。
一日の講義が終わった後、中国語講師の徐が困惑の表情で赤宮に近づいてきた。そして耳元で「困るよ、赤宮氏」と囁く。何のことかと問い質すと、なんと昨夜のことだった。ホテルの女性従業員が赤宮に強姦されたと訴え出たというのだ。「ちょっと、待ってくださいよ!」。焦る赤宮は徐につかみかからんばかりに弁明し始めた。廊下で苦しんでいた女性を介抱するために部屋に入れたこと、その後、女性の方から求めてきたこと、突然泣き出して部屋を出て行ったこと…赤宮は事細かに説明していった。
「だめだよ、そんなこと証明できないよ」。徐は首を振り赤宮の弁明がまったく通用しないことを言い渡した。赤宮は頭が真っ白になった。たしかにいくらかの罪悪感があるだけに、赤宮には強烈なパンチとなった。「強姦?冗談じゃない!」と吐き捨ててその場で崩れてしまった。「赤宮氏、困ったことになったけれど、私が何とかするよ。任せて」と徐は彼を抱きかかえるようにして慰めた。そして、この事態を収拾するためのある条件を示してきた。それは…。

  【第14話】

隣の神田家には最近、悩まされることが多い。65歳で今年会社を定年退職した亭主は、まだ血気盛んな御仁である。普段、暇なもんだから、自慢の庭いじりをやっているんだが、そのときに60年代のロックやらポップスやらを大音量で流している。今日みたいに休日はゆっくり寝ていたいのに、朝からビートの効いた曲を発する。近所の迷惑をまったく考えない困った隣人だ。
先月など、奥さんが「うちの庭にゴミを投げ入れた」と難癖をつけてきた。わが家の人間がゴミを隣に投げ入れるなど考えられない。継父も変わった人間だが、そんなことはしない。カラスか何かが運んできたものだろう。神田貴婦人は大人しい母に一方的にまくしたてていたが、継父が出てきて一喝。相手は「絶対お前たちだ」とグチグチ言いながら帰っていった。
母は「まぁ、お隣さんなんだから」と、夫婦仲が悪い隣人のストレスが難癖の原因だと庇う。継父は「隣だからといって、何でも大目に見るわけにはいかんのだぞ!」と徹底抗戦の構え。

…継父の言う通り!隣人だからといってどんな相手でも仲良くなんてできない。隣人だからよけいにぶつかり合うのだ。嫌な人間とは付き合わなければいいんだ。別にこっちは何も困らない。
ん…? 継父の左日新聞はどんな隣人でも「仲良く」とかなんとか言ってたはずだが。こっちのプライドやら立場を投げ捨ててでも友好が大事なんだと。とにかく経済的につながりが深いからと。
バカを言うんじゃない!ゼニカネのために相手の理不尽に屈しろというのか。こちらが借金しているのならわからんわけじゃない。でも立場は逆で、こっちが支援してやった側だ。
要は「儲けたいから」というだけの卑しい理屈。普段は「カネより心の豊かさ」なんてほざいているくせに。やっぱり30代後半で年収1千万円を超える会社だ。「心よりゼニ」なんだろう。

 【Report K007】 Confidential Lebel - 1

《1978年7月》

●来月に迫る「日中平和友好条約」締結を前に、首都・北京では心なしか日本人に対する民衆の目が、柔らかく、しかしこれからの伴侶を見定める婿の如く複雑な輝きを放つように赤宮には感じられた。
文化大革命で破壊された国家を建て直すべく起ち上がった中国の新リーダー・鄧小平が、次々と改革を推し進めていく様を現実に見ている留学生たちには、研修で「これからは中国の時代」だと頭に叩き込まれていることもあり、しっかりとした使命と決意が芽生えてくる。何とかしてこの国との友好を推進していかなければと。
それと同時に、過去に蛮行を働いた日本人としての後ろめたさも重なる。数ヶ月前に「歴史所」で史料を見せられた以外、彼ら留学生を責める中国人が皆無だったことも、一層その苦さを増した。

ちょうど留学期間の中間ということで、8名の留学生は中国政府から伝統あるホテル・雅陽院飯店での豪勢な夕食会に招待された。日本ではめったに食べられない本格的な中華料理がテーブルいっぱいに並べられ、ステージ上では瀋陽雑技団が精密で豪快な演技を繰り広げていた。そこにモデルのような長身をチャイナドレスで包んだ女性数名が、給仕係として宴に華を添える。

相当にアルコールが回ったところで酒宴はお開きになり、留学生たちは赤ら顔で談笑しながら、その日はホテルの別々の階にある部屋に戻っていった。
4階でエレベーターを降りた赤宮は、フロアの隅にうずくまる女性に気付いた。黒いスーツ姿の女性はホテルの従業員らしく見えた。赤宮は、胸を押さえ額に汗を浮かべる彼女の肩を抱え込み困惑した。エレベーターを使おうかとも考えたが、あまりの苦しげな様子を見て、とりあえず近くの自分の部屋へ入れてからフロントに連絡しようと考えた。

なんとか部屋の中までたどりつき、女性をそのままベッドに寝かせた赤宮は、部屋の電話でフロント宛にダイヤルを回した。「ウェイ?」(もしもし)と修得したての中国語で状況を説明した赤宮は、係員が来るまでソファで待った。
しかし、いつまでたっても誰も来ない。か細い声で苦しんでいたスーツの女性が静かになった。寝入ったのかとひとまず安心した赤宮は、コップ一杯の水を飲み干す。すると、突然むっくりと彼女が起き上がった。そして…。

  【第13話】

メリーがまた別の男を連れてやってきた。今度はエキセントリック・ボーイだ。
ロング・ヘアーとピアスにタトゥー、人をロックオンするような鋭い眼つきは十分に威圧感を与える。前の中性的なカレシでこりごりしたのか、タイプが正反対な「頼りになりそう」な人物。
すぐに父親に男を紹介したい娘らしく、再び継父と相対することになる。案の定というべきか、イメージ通りのぶっきら棒な態度で継父に接している。女の父親になどまったく興味がないという風で、いやいやながらメリーに引っ張ってこられた様子がよくわかる。そして継父もニコリともせず、早くこの場から立ち去りたいという態度がみえみえ。ただひたすらメリーがしゃべりまくっているという構図。

カレシはバイトの時間だといって頭ひとつ下げず、さっさと一人で帰ってしまった。
バタンと玄関ドアが荒々しく鳴ったあと、すかさず継父は娘に言った。「おまえ、もう少しまともな男と付き合えないのか。あんなんじゃ社会で通用しないぞ」。その言葉を合図に親子の口論が始まった。

【高校入試、茶髪・眉そりチェックし不合格 神奈川の県立…】
「神奈川県平塚市の県立神田高校が入学試験で選考基準になっていない茶髪や眉そりなどをチェックし、該当する受験生を不合格にしていたことが28日、わかった。県教育委員会の発表によると、本来の基準では合格圏内にいながら不合格にされた生徒は、過去3回の入試で計22人にのぼるという。 県教委によると、この不正なチェックは…」(本サイト「偽善者」参照)

…これは何年か前の左日新聞の記事だ。「不正」だということで否定的に書いている。
しかし、学校に寄せられた千件を超える意見では、学校を支持する声が9割にのぼったという。当たり前だ。それが普通の日本人の感覚なのだ。そういう意味で継父の意見は正しい。
しかし継父は左日新聞の言説を代表する職を担っている。どんな格好をした人間だろうと、どんな態度をとる人物だろうと、受け入れなければならない。それが言いっぱなしでは済まない大新聞の責任ではないのか?

 【Report K006】 Confidential Lebel - 1

《1978年4月》

●泣き始めたジュエランを見て、赤宮は狼狽した。しかし周囲の中国人観光客は、何ら注意を払うこともなかった。見慣れた光景だとでもいうように。
「どうしたの?ジュエラン」 赤宮は顔をのぞき込むようにして尋ねた。しばらくして落ち着いてきたジュエランは、嗚咽を漏らしながらこう答えた。「私のおじいさんとおばあさんは、日本軍に殺されたの…。おじいさんの兄弟も家族も、近所の人たちものみんな…」。その後に続けた彼女の言葉は、赤宮を戦慄させることになる。赤ん坊を放り上げて銃剣で刺し殺す日本兵、妊婦の腹に剣を突き刺す日本兵、目をえぐりだし耳を削ぐ日本兵、たくさんの村民を生き埋めにする日本兵等々。「みんなお父さんや先生から聞いたの。その写真がここに…」言い終わると再びハンカチで目頭をおさえた。

「ひどい、あまりにも酷すぎる!」 赤宮は怒りを覚えてきた。たしかに日中戦争があって、日本軍が中国大陸を侵略したことは学校などで習ったし、左日新聞社の先輩である奔多記者が何年か前に「中国旅行」という連載を新聞でスタートさせ、そこで日本軍の蛮行が紹介されたことも彼は覚えていた。その連載を読んでいたときは、あまりの残酷さに現実味を感じられなかったが、今、こうして目の前で被害者の親族の口から泣きながら語られる地獄模様を聞くと、赤宮にはものすごくリアルに感じられた。
「この真実から目を背けてはいけない。こんなこと普通の日本人は知らない。自分が書かなくては」 強い正義感が赤宮の胸に芽生えた。

二人がこの建物から出ると同時に、同じ左日新聞の留学生、秋村が初老の男性ガイドとともに入れ替わるように入っていった。そして、赤宮と同じように日本軍の蛮行を聞くことになる…。

  【第12話】

祝日の今日、継父の息子がはじめてわが家にやってきた。奥さんと子供、つまり継父の初孫を連れて。
久々にかわいい孫に会えたということで、継父は公園に連れて行ったり、ファミリーレストランでご馳走したり、デパートでおもちゃを買い与えたりと、普段は見せない好々爺ぶりをたっぷりと見せていた。

しかし、そんな継父が激怒した。オレに対して。
というのも、オレは先日、学校での閲覧制限問題で話題になっていた漫画「はだしのゲン」を、どんなものだろうと見るために、図書館から借りてきていた。読み進むに従って、旧日本軍が女性の首を斬り飛ばしたり、妊婦の腹を裂いたり、挙げ句の果てには女性の局部に一升瓶を…という具合で、これでもかとばかりに残酷な描写が続いていく。また、昭和天皇を犯罪者扱いしたり、中国共産党の主張を載せたりと、まるで中国のプロパガンダ漫画の様相を呈している。松江市の教育委員会が閲覧制限するのも至極当たり前だと感じる代物だ。

そんな漫画をオレは居間の飾り棚の上に置いたままにしていた。それを小学校2年生の孫が見てしまったのだ。
夕方、孫がその漫画を興味深そうに読んでいるところに、継父がやってきた。ちょうど残酷な場面だったようで、継父は凄まじい形相で孫から漫画を取り上げ、オレに投げつけた。「こんなもの、居間に置いとくな!」と怒鳴りあげた。初めて継父に怒られた瞬間だった。反論したいところだったが、長男一家もいたので、オレはそのまま漫画を持って部屋に上がった。

…なんなんだ、あのオヤジは!左日新聞は「はだしのゲン」の学校での閲覧制限に大反対したんじゃなかったのか?「戦争を知る貴重な作品だ」などと持ち上げていたではないか!そんな素晴らしいものなら、なぜ自分の孫から取り上げるんだ。積極的に見せればいいじゃないか。
結局、「偽善」なのだ。身内にはおどろおどろしくて見せられないものを、他人の子供には平気で勧める二重基準。こんな無責任な新聞があるか。あんな漫画、正常な神経を持っている親なら、絶対に自分の子供には見せたくない。常識的な判断を松江市の教育委員会はやったのだ。
左日の社員よ、あんたらは「はだしのゲン」を自分の子供や孫に読ませる義務がある。

 【Report K005】 Confidential Lebel - 1

《1978年4月》

●北京観光のスタートは故宮からだった。天安門から入った故宮の荘厳な佇まいに、赤宮は感動で頬をぬらした。ついに憧れていた大中国の象徴に足を踏み入れたのだから。
清朝皇帝の息遣いが感じられる寝室や庭園などを、ガイド役であるジュエラン(菊蘭)の丁寧な案内でめぐった。彼女とのふたりきりの観光で心躍らせていた赤宮だったはずだが、それ以上にこの紫禁城との出会いの方が勝った。ジュエランの説明はあまり耳に入ってこなかった。なぜなら、彼は日本にいるときから故宮については完璧に予習していたからである。それほど待ち焦がれていた存在だった。
約2時間の故宮見学を終え、ふたりは昼食をとるために「北橋飯店」に入った。食事時も赤宮は興奮さめやらぬ様子で、ジュエランに故宮についてレクチャーしていた。どちらがガイドかわからない有様だった。

午後からの見学は、「歴史所」と書かれた建物だった。レンガで組み上げられた古く簡素なところだった。
中に入ると、薄暗く湿った空気に覆われ、数多くの透明ケースが展示されていた。その中身は中華人民共和国の歴史資料だった。少しは北京語を予習してきた赤宮だったが、細かな史料の内容までは読み取れなかった。
それら展示物のひとつひとつを、ジュエランが細かく説明していく。中国共産党の沿革、国民党との内戦、歴代指導者の活躍…、そして最後にたどり着いたのは「栄光の抗日戦争」だった。そこには「中国を侵略した鬼子(日本軍)に勇敢に立ち向かう八路軍(共産党軍)」の様子、そしての旧日本軍の中国での蛮行が写真入りで展示されていた。
その説明を始めたジュエランは、突然、手で顔を覆い、泣き始めた…。

  【第11話】

今日、久しぶりに継父の娘(オレの妹になるわけか)メリーがやって来た。
どうやら、結婚を考えているという例のカレシの相談に来たらしい。メリーとして別れたほうがいいのかどうか迷っているらしい。
というのも、半月ほど前、二人で近くの公園を散歩していたときのこと。少し離れた公衆トイレ付近で若者同士が口論をしていた。それが段々激しくなり、とうとう胸ぐらをつかみ出した。
よく見ると、その若者の一人がカレシの友だちだったのだ。このままだと殴り合いになること必至。メリーとしてはカレシが止めにはいるものと思っていた。
ところが、カレシは「巻き込まれるから逃げよう」と言ってメリーの手をとり足早に公園を出て行ってしまったという。

「なんという男だ!」継父は憤慨した。もともと容姿も性格も男らしくないということで、娘と結婚することに反対していた継父は、「そんな卑怯なヤツ、さっさと別れてしまえ。いざとなったらお前さえ守ってくれないかもしれないんだぞ」ともっともな正論を吐く。メリーとしては、カレシには怪我させたくない。かといってさっさと逃げ去る男というのもどうかと思っていた。でも、父親の意見であっさりと結論を出した。別れると…。

…そうなんだなあ。それが普通の父親の感覚だろう。でも普段は社説で「戦争に巻き込まれるから防衛力の強化反対」だの「集団的自衛権は行使するな。同盟国がやっつけられても無視しろ」と盛んに主張している左日新聞のお偉いさんだから、きっと「いくら友だちでもむやみに手助けするな。怪我したらどうする」くらい言うのかと思っていた。
新聞でのアンケートをよく見ると、左日的な主張に賛同するのは女性の方が多い。例えば憲法9条改正でも、男性は改正反対が半分以下になる。それを男女合わせて集計すると、改正反対が過半数になるのだ。
左日の「一国平和主義」は女性の意見なのだ。それは母性からくる感情としてしょうがないことなのだと思う。
でも、いっぱしの男なら「国が危うくなったら戦う」ではないのか。現にどこの国の男子でも、国を守るために戦う意思を持った者がほとんどだ。誰だって家に泥棒が入れば戦うだろう。
ヤマトナデシコの諸君、左日のような男でいいのか!君たちの意見で国を救ってくれ!

 【Report K004】 Confidential Lebel - 1

《1978年4月》

●赤宮ら左日新聞の留学生8人は、天津から列車に揺られて中国の首都・北京に到着した。これから約半年間の語学修得を中心とする研修が始まる。約10年間に数百万から数千万という犠牲者を出し、寺院などの旧文化を破壊し、人々の心まで荒廃させた文化大革命(結局は中国国内の権力争い)が終結して間もない中国だったが、ここ首都北京は穏やかな日常が広がっていた。日本の学生服のような人民服を来た大勢の市民が、霞がかった大地を自転車に乗って移動している光景はテレビで見る姿そのままだった。人々の喧騒はあるいが、それ以外は機械的な音が全く聞こえない不思議な大都市である。

留学生は左日新聞中国総局の担当者に導かれ、なぜか最初に中国共産党の“研修院”に入った。そこではこれからのスケジュールと注意事項のレクチャーが共産党員から行われた。日本語が堪能だった彼から特に口酸っぱく言われたことは、指定された行動範囲からはずれないことと、一般の中国人には話しかけないということだった。

初日ということもあり、赤宮ら留学生には北京市内の観光が許された。それも個人行動ができるという。ただしガイド付きだが…。8人にはマンツーマンで中国人のガイドがついたが、赤宮のもとにやってきたガイド役はなんとあのジュエランだった。どこで彼女と会えるのか待ち望んでいた赤宮は、さっそくの出会いに胸を躍らせた。しかし、これが自分の数奇な運命を決定づけるスタートになることなど、この時の赤宮には知るよしもない。

  【第10話】

伯父夫妻は久しぶりの東京見物をゆっくりと楽しみ、今晩が最後の夜となった。
継父も伯父も、とにかくよく飲む。酔いがまわってくると、思い出したように先日の村での諍いを話し始めた。
彼らの祖父が犯人だと言った人間は、村では嘘つきで有名だったという。なぜ、そんな人物の証言を他の人たちは信用しているのか。実は祖父は厳粛な人間で、曲がったことが大嫌い。正論を押し通すために村人から煙たがられる存在だったらしい。だから、たとえ嘘つきの言うことであっても、感情的には祖父を排除したかったのだろう。
もちろん、そんな気質の祖父を逆に尊敬している人間もいた。それらの人々は祖父の無実を疑わない。
継父が言った。「じいさんが殺人なんかするわけないじゃないか。村の人間もどうかしてるよ。あんなヤツの嘘話を信じるなんて。それまで何度も騙されただろうに」。

…そうなのだ。嘘つき常習者の話には眉唾で聞かなければならない。継父もわかっているじゃないか。普段の継父がだんだん“まとも”に見えてきた。
それがなぜ社説になると、中国の言うことを何の疑いももたずに書いてしまうのだろう。「中国産冷凍餃子に毒をいれたのは日本だ」「中国漁船にぶつかってきたのは日本の海上保安庁の船だ」「北京の大気汚染は日本企業のせいだ」等々…ここ数年だけ見ても嘘のオンパレード。中国政府がいかに信用できないか、普通の人間だったら感じているはずだ。
そうなると「南京大虐殺」や「日本軍の中国人殺害3千万」、「三光作戦」「毒ガス部隊」などもろもろの日本軍の“蛮行”も怪しいものに思えてくるのが正常な感覚だろう。
そんなごく普通の感覚を持ち合わせていないか、あるいは持ち合わせていないようにあえて見せている(どうしてそんな必要があるのか)のが左日新聞の社員なのである。
まぁ、もっとも左日新聞自体が「嘘つきメディア」なのだが…。

 【Report K003】 Confidential Lebel - 1

《1978年1月》

●新年早々、赤宮は左日新聞本社に対して中国への留学の申請を行った。するとどうだ。3日と置かずに本社から留学の承認が下りた。毎年、海外留学は希望者が多く倍率も高いため、初めての申請ではなかなかOKが下りないと聞いていた赤宮だったから、この僥倖には飛び上がらんばかりに大喜びした。
赤宮はさっそく汪平に連絡を取り、留学承認の報告と取り持ってくれたことへの感謝を伝えた。汪の言うところでは、自身の勤務するR大学の教授が親しい左日の幹部に赤宮を推薦してくれたらしい。

2日後、赤宮と汪はホテルの中華レストランで壮行式ばりの祝杯を挙げた。
汪はある女性を伴っていた。中国からR大学に留学している学生で、陽菊蘭(ヤン・ジュエラン)という。
小柄だが美人の産地として名高い杭州出身の可愛らしい女性だった。なんと彼女は今回の赤宮の中国留学で、通訳係として同伴してくれるという。お互いの語学学習にはもってこいの経験になると汪は説いた。
思いがけない汪の提案と菊蘭の美しさに、赤宮はややたじろいだが、もちろん断る理由はない。快く受け入れ、後の晩餐を3人で楽しんだ。中国出発は2ヵ月後となる…。

  【第9話】

昨晩はうちに一泊した伯父夫妻。朝食も終えて、みんなで居間でテレビを見ていた。
民放のドキュメンタリーで「全共闘と団塊の世代」をやっている。学生“運動”真っ盛りの頃の映像では、ヘルメットを被った暴力的な学生が火炎瓶や角材で大学を破壊している。それを阻止しようとする機動隊。

突然、伯父が「あの頃はオレも暴れたよ」と話を切り出した。大学では運動の副リーダー的存在で、前線に立って機動隊にレンガを投げつけるなどして向かっていったという。もちろん逮捕。なんと公務執行妨害、傷害罪などで執行猶付きの有罪判決を受けたと告白した。でも伯父は悪びれる様子もなく、武勇伝のように機動隊との対決を次々に披露していく。(そんなのが教師になれたのか?)
「偉そうに、要は前科者ね」伯母が冗談めかして言う。継父はとっさに、「まぁ、姉さん、アニキも有罪だったけど、国家権力に歯向かった勲章みたいなもんだよ。それにもう執行猶予期間も切れたし、前科者じゃないけどな」と庇った。

…そうだ、その通りなのだ。罪を償えば罪人じゃないんだ。それが常識だ。
それを左日新聞はなんだ?A級戦犯をいつまでも犯罪者扱いしているではないか。彼らは堂々と死刑や禁固刑を受け罪を償っている。それを“良識ある”左日新聞は極悪な犯罪者として紙面でおとしめ続けている。
それに、A級戦犯は当時の国民の圧倒的な支持で名誉回復されているのだ。それをどう考えるのか。今まで左日はそのことをまともに弁明したことがない。答えようがないから逃げているのだろう。
左日の社説責任者の継父。身内に甘く、他者(日本?)に辛い二枚舌。
なんか書いているうちに段々頭に血がのぼってきた。一杯あおって寝るしかねえな…。

 【Report K002】 Confidential Lebel - 1

《1977年12月》

●暮れも押し迫ったある日の午後、突然、赤宮の一人暮らしのアパートに汪平が訪ねてきた。汪はクリスマスプレゼントも兼ねてと、中国での土産物である明時代の小さな観音坐像の陶磁器を赤宮に手渡した。
汪の帰りを心待ちにしていた赤宮は大感激し、教えていなかった自分の休日やアパートの住所を汪が知っていたことなど全く気にも留めずに、汪を部屋に招き入れた。
汪の土産話を食い入るように聞き込む赤宮は、最初に汪に出会ったころのように、再びあの悠久の大地への憧れを強く抱くようになる。
「ところで赤宮氏、中国に語学留学してみないか」と突然、汪から夢のような提案が飛び出した。すでに中国に酔いしれている赤宮はもちろん大歓迎だ。左日新聞の記者部門では、各国語の習得のための1年間の語学研修制度がある。赤宮としては、会社から承認をもらわなければいけない。
そのことを汪に告げると、「そのことは全く心配いらない」と言う。何でも、汪の方で左日に打診していたというのだ…。
        
  【第8話】

今日、継父の兄(義理のおじ)夫婦がわが家にやってきた。先日とてもお世話になった二人だ。
夕飯は近所の鮨屋で、ぼくも同席した。おじは昔、地元の高校野球の監督をやっていたという。甲子園も狙えた強豪校だったらしく、当時はバットで尻を叩いたり、ビンタも当たり前だったと、酔ったおじは得意げに語る。
「それに比べれば、いまは厳しくなったもんだ。ちょっと小突くだけでも大問題だ。あれじゃあ強いチームや選手をつくれない。監督もやってられねえよな。同情するよ」と継父は兄に追従する。

…ちょと待て。誰が言ってもいいが、左日新聞の社員だけはそれを言ってはいけない。
左日新聞は、戦前戦中の日本を擁護する人々が「昔は帝国主義も戦争も違法ではなかったから免罪」というごく当たり前の理論を持ち出しても、「それでは通らない」と理屈にもならない感情論で責め立てるではないか。身内なら通るのか? 完全なダブルスタンダードここに極まれりだ。
その上、継父が担当している社説でも指導者の「暴力制裁」を強く否定しているじゃないか。
ちなみに左日は自らが主催する高校野球大会を「組織をあげて奨励しているのだ。強盗殺人事件の取材をほったらかしにしてでも高校野球を取材せよと命じられ、それがうまくいくと『アイツは仕事ができる』等とほめたりする」(烏賀陽弘道)という。なんじゃ、この人は、この会社は…。

 【Report K001】 Confidential Lebel - 1

『赤宮圭介』 1955年3月15日生(58歳)
埼玉県W郡D村 出身  身長180cm
東京大学法学部卒
現・左日新聞社論説主幹
    政治部記者時代 中国への留学経験あり。
    妻・幸枝とは3年前に離婚
(子供は一男一女 幸枝は離婚後行方不明)
 現在、防衛省情報本部勤務の北岡頼子(54)と再婚。

部長からのご依頼である第二課新人研修用テキストを兼ねる報告ため、赤宮の入社時点からの経緯を記す。全体像を把握しやすくするため、物語調になることと当方の主観が含まれることをご容赦願いたい。
(コードネーム「ゼロ」より)



《1977年 左日新聞入社2年目》

●9月 S駅前の大型書店「島谷書店」の中国コーナーで、
中国語の辞書を探していた赤宮は、
そこでR大学講師を名乗る中国人・汪平と“偶然”出会う。
赤宮が探している辞書を汪は見つけてやり、
その後、二人は一緒に昼食をとることになる。
中国に憧れを抱いていた赤宮は、
汪の語る中国の情景に魅了され、今後の親交を約束する。 

しかしその後、汪からの連絡はなかなか来ない。
痺れを切らした赤宮は、R大学へ電話をし
汪との連絡を試みるが、
本国である中国へ出張中とのことだった。
赤宮の汪への思いはますます募っていく…。
       
  【第7話】

継父は今日、自動車のスピード違反でキップを切られてしまったらしい。
夕食時、おふくろに向かって相当グチっていた。「何で俺だけなんだ。前の車も後ろの車も同じようなスピードだったのに。ついてねえな、ちくしょう」と憤慨している。

…???。 また「みんなもやってるじゃないか」論だ。それは左日新聞が最も批判する態度じゃないのか。従軍慰安婦だって、植民地支配だって、そして戦争だって「どこの国でもやっていた。日本だけが悪いわけじゃない」と弁護すると、「それでは通らない。率先して反省・謝罪せよ」と言い張るではないか。
そんなに左日の社員はご立派な人格者なのか?

ネズミ捕りに引っかかったのが、よほどおもしろくなかったのか、継父はその夜、行きつけのスナックに呑みに出かけてしまった。道端で立ちションをしてから…。(継父よ、それも犯罪だぜ!)

  【第6話】

秋になり、継父も僕も大好きなプロ野球の日本シリーズが始まった。
継父はアンチ巨人というだけで特にご贔屓球団はなく、そのときどきの話題チームを応援している。今年のシリーズは阪神と日本ハムの対戦だ。

第1戦、第2戦、第3戦と日ハムは3連勝。 継父は「やっぱり思った通り。日ハムの戦力バランスは抜群だ。阪神なんか目じゃないんだ。最初から分かっていたんだ」と得意顔。 阪神ファンの僕としてはおもしろくない。

それから甲子園での第4戦。阪神は投手陣の好投で完封勝ち。次の第5戦もサヨナラ勝ち。 「まあ、こうじゃないと日本シリーズは盛り上がらないからな」と継父。
勢いに乗る阪神は、札幌に戻っての第6戦も打撃戦を制して3連勝。継父の口数も徐々に減少。

きたる最終戦、阪神は息詰まる投手戦を制して、とうとう逆転優勝してしまった。バンザイ!

その夜以降、継父は野球の話題を一切出さなくなってしまった。まるで何事もなかったかのように。

…やっぱり継父は朝日、(あっ、間違った!)、左日新聞の人間だ。最初3連勝して(したから?)あれだけ支持した日ハムが、まさか逆転されるとは思わなかったんだろう。
左日がかつて支持していた社会党や社会主義、北朝鮮、民主党、もっと言えば従軍慰安婦の強制連行説が凋落していくと、徹底的にしらばっくれる様はそっくりである。(笑) 潔く負けを認めればいいものを。

 【第5話】

夜、久々に継父と酒を酌み交わした。そして、継父のほうから先日の田舎での出来事を語り始めた。
おふくろから大まかな内容を聞いていたが、継父はもっと突っ込んだ話をした。

この事件(事故)は、証言者のまことしやかな目撃談が村に広がり、村民の多くは継父の祖父が犯人であることをほぼ疑いなく信じ込んでいた。でも継父に言わせれば、その証言自体、あやしいものだったという。
というのも、その目撃者は祖父と日頃から仲が悪かった人物らしく、祖父を貶めるために嘘の証言をしていた可能性があったというのだ。
それに、死亡した村民が一人で沢のほうへ向かうのを見たという人も二人現れている。
継父としては、そちらの証言を信じたいという。当然だろう。自分の身内に降り掛かった疑惑だ。まったく正反対の二つの証言があれば、身内のことなら自分たちに有利な証言にすがりつきたいはずだ。

…でも待てよ。左日新聞はどうだろうか。南京大虐殺や従軍慰安婦、沖縄自決命令など議論が真っ二つに割れている問題では、日本に不利な(それも信憑性が疑われる)方の意見をあえて掲載しているではないか。日本を弁護するような材料は一切無視してでも。
左日新聞のお偉いさんである継父なら、「祖父が真犯人だ!」と断言してもよさそうなものである。
それとも、継父や左日新聞は、日本は「身内」ではない、と考えているのか。

【第4話】

日曜でも新聞社は動いている。継父が出勤した後、僕はおふくろに昨日の件を聞いてみた。
こういうことらしい。

昭和の初期、継父の村落で山火事が発生し、村民は総出で必死の消火にあたった。もちろん、継父の祖父も出動した。その消化活動の最中、一人の村民が沢に転落して亡くなってしまった。
なんとか火は鎮火したのだが、今度はその死亡事故のことで騒動が起きた。誰かが消火のどさくさにまぎれて、その村民を沢に突き落としたというのだ。
そして、継父の祖父が転落した村民と口論をしているところを見たという証言者があらわれた。それで犯人は祖父ということになった。警察に通報され取調べが行なわれたが、身に覚えのない祖父は一貫して否定。
結局、証拠不十分で釈放され、村人は足を踏み外して転落した事故ということで処理された。

しかし遺族はたまらない。証言を鵜呑みにする遺族は、その後、さまざまな嫌がらせを祖父やその家族に対して繰り返す。その恨みが今になっても続いているのだという。昨日の口論の相手は、その遺族の一人だったのだ。

もう半世紀以上前のことなのに、事故と処理されたのに…。(続く)

【第3話】

今日、家族三人ではじめて継父の田舎に連れて行かれた。
車で2時間以上かかる静かな山村で、朴訥な継父の兄夫婦からはずいぶんと厚いもてなしを受けた。

夕方、三人で村を散策しているとき、一人の村人と継父があることで口論になった。
「うるせえ、人殺しの孫が!」… その村人は継父に向かってこう言い放った。僕とおふくろは今にも殴りかかろうとする父を村人から引き離し、騒ぎに気づいた他の人の仲介もあって、なんとかその場をしのいだ。

夜の継父は、うさを晴らすかのように痛飲していた。「人殺しの孫?」どういうことだろう。直接継父に聞くのも気が引ける。事情を知っているらしいおふくろに明日にでも聞いてみよう。

【第2話】

僕の会社では毎日、読売、産経、日経、それに左日と主要5紙をとっている。昼休みには、読売と左日を結構じっくりと読み、産経、毎日、日経はざっと目を通す程度。いつも感じることだが、他紙と比べて左日は社説が偏り過ぎている。ほとんど反対意見というものを併記していない。左日新聞は中立が建前ではないのか。
それについて夜、継父に聞いてみた。継父が言うには「中立なんてものはない。左日だけじゃない。どこの新聞だって偏っているんだ。悪いか」と開き直った。

…おかしいではないか。「どこでもやっているからいいんだ」は左日の主張と違うだろう。
例えば従軍慰安婦問題だって、「他国もやっていたから日本は謝罪しなくていいは通らない」といつも口酸っぱく言っているではないか。仲間以外のメディアを締め出す悪名高き記者クラブ制度も継父に聞いてみた。やはり「左日だけでじゃない。みんなやっていること」と言う。そんな二枚舌は通らないだろう…。

【第1話】

継父には、分かれた妻との間に「メリー」という一人娘がいる。継父から買ってもらったマンションで遊んで暮らすメリーが、今日、僕らの家に継父をたずねてやってきた。なんでも、連れてきた彼氏を紹介したいのだそうな。

その彼氏というのがまた、細見で色白、見目麗しいその佇まいは女そのもの。語り口もしんなりしていて、どこかつかみどころがない。もちろん、生物学的には「男」である。どうやら結婚も考えているらしい。
娘の彼氏と話す継父は、どこかぶっきらぼうで、一刻も早くこの場を切り抜けたいという心根がミエミエ。
およそ30分間の顔合わせが終わり、メリーは彼氏とともに去っていった。

おふくろと三人での夕食時、継父はこのことを話題に切り出した。「まったく、女みたいなのを連れてきやがって。あんな男、絶対に許さんぞ」。なんでも継父は、「男は男らしく、女は女らしく」という信条らしい。

…おかしいではないか。継父の勤める左日新聞はそんな古臭い保守的な物言いはしていないはず。常日頃、一般通念にとらわれない、同姓婚やいわゆる「ジェンダーフリー」など「進んだ」生き方をを高く支持しているのに。自分の身内だと、話は別ということなのか…。



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